30歳、物流テックベンチャーから総合商社の事業開発へ跳躍した理由

30歳の主人公は、物流テック系ベンチャーで事業企画・アライアンス担当として、新サービスの立ち上げやパートナー企業との提携を推進していました。ただ、会社の資本力やネットワークの限界から、「描ける構想に対して実現できるスケールが小さい」というもどかしさを抱えるようになります。そこで挑戦したのが、大手総合商社の事業開発マネージャー職。スタートアップで磨いた企画力と現場感を武器に選考を突破し、年収も540万から950万へ。モビリティ・物流領域の新規事業を、大きな資本とグローバルネットワークのもとで動かす側へとポジションアップした転職成功ストーリーです。

人物プロフィール

年齢:30歳
性別:男性
転職前:物流テック系ベンチャー/事業企画・アライアンス担当
転職後:大手総合商社/事業開発マネージャー(モビリティ・物流領域)
転職前年収:540万
転職後年収:950万
転職動機・テーマ:スタートアップで磨いた事業開発力を、より大きな事業スケールで試したい。

ざっくりまとめると

・物流テック系ベンチャーで事業企画・アライアンスを担当
・事業スケールと会社の器に限界を感じ、30歳を前にキャリアを再設計
・総合商社のモビリティ・物流領域の事業開発マネージャー職に内定
・年収は540万→950万へ大幅アップ
・スタートアップで培った現場感と構想力を、大手の器で活かしている成功事例

転職前のキャリアと悩み

「アイデアはあるのに、会社の器が追いつかない」感覚に耐えられなくなった。
私は大学卒業後、インターンをしていた物流テック系ベンチャーにそのまま入社しました。就活サイトで企業を比較するよりも、「今面白いことをやっているこの会社に残る方が早い」と安易に決めてしまったのが正直なところです。入社後は事業企画として、新機能の企画や中小の物流会社との業務提携、PoCプロジェクトの推進など、スピード感のある環境で多くの経験を積むことができました。

しかし、3〜4年目を過ぎた頃から、「このままここだけでキャリアを積んでいくのは危ういかもしれない」と感じ始めました。理由は大きく二つあります。一つは、事業のスケールの限界です。現場で見えてくる課題や、新しく仕掛けたい構想はたくさんあるのに、資本力や人員の制約から、どうしても小さな実証実験レベルに留まってしまうことが多く、「本当に変えたいところまで届かない」というもどかしさが募っていきました。

もう一つは、自分の市場価値への不安です。名刺には「事業企画」と書いてありますが、そのスキルが他社でも通用するのか、自分でも確信が持てませんでした。周りを見渡すと、同じ大学の同期は総合商社やコンサル、大手メーカーで着実に昇進しており、30代に向けてキャリアの基礎を固めているように見えました。一方で自分は、スタートアップの文脈ではそれなりに重宝されているものの、「会社を離れて一人のビジネスパーソンとして見られたときにどれだけ評価されるのか」が分からず、不安だけが積み重なっていきました。

「このまま流されて働き続けるのか、それとも一度立ち止まってキャリアを設計し直すのか」。30歳手前のタイミングで、ようやく真剣に向き合わざるを得なくなったのが当時の心境でした。

転職を意識したきっかけ

総合商社で働く同期の「スケールの違う仕事」に刺激を受けた。
転機になったのは、大学時代の同期と久しぶりに会った時のことです。彼は総合商社でモビリティ関連の投資・事業開発に携わっており、「数十億〜数百億規模の投資案件」や「海外企業とのジョイントベンチャー」など、明らかに自分の世界とはスケールの違うプロジェクトを担当していました。

彼の話を聞くうちに、「自分がベンチャーでやっていることと、やりたいことの方向性は近いのに、扱っているレイヤーとスケールが違いすぎる」と感じました。物流現場の課題をテクノロジーで解決したいという思いは同じなのに、総合商社の立場であれば、グローバルなパートナーや多様なアセットを活用しながら、より大きな構造に働きかけることができる。そのギャップに、大きな刺激と悔しさを覚えました。

また、ちょうどその頃、勤めていたベンチャーでは追加の大型資金調達が難航しており、中長期の事業計画にも不透明感が出始めていました。優秀なメンバーの退職も続き、「この会社の事情に自分のキャリアが引きずられるのは避けたい」という危機感も高まりました。

「スタートアップで培った事業開発の経験を、もっと大きな器で試してみたい」。そう考えたとき、真っ先に頭に浮かんだのが総合商社や大手企業の事業開発ポジションでした。ここで動かなければ、30代半ばになって同じ後悔を繰り返すと直感し、本格的に転職を視野に入れるようになりました。

転職活動内容

「スタートアップで何をやってきたのか」を、他社目線で再定義した。
最初に取り組んだのは、スタートアップでの経験を「事業開発のプロセス」として再定義することでした。今までは、「新規サービスの立ち上げ」「アライアンス提携」「PoC推進」といった肩書きベースでしか語れていなかったため、それを次のような観点で分解し直しました。

  • どのような市場仮説・顧客課題を前提にしていたのか
  • 情報収集や検証のために、どのような行動を取ったのか
  • 社内外のどのステークホルダーを巻き込み、どう意思決定を進めたのか
  • 結果として、売上・コスト・KPIにどんなインパクトを出せたのか

これらを一つひとつ言語化し、職務経歴書では「プロジェクトごとのストーリー」として読み取れるようにまとめていきました。同時に、物流・モビリティ領域に強い転職エージェントにも登録し、自分の経歴がどの程度総合商社や大手企業で通用するのか、率直なフィードバックを求めました。

応募ルートとしては、エージェント経由の非公開求人をメインにしつつ、一部の総合商社や大手企業にはダイレクトリクルーティングも併用しました。面接対策では、「なぜ今のスタートアップではなく、大手や総合商社なのか」「ベンチャー的なスピード感と、大企業のガバナンスをどう両立するのか」といったポイントを中心に、何度も答え方を磨き込みました。

また、「商社側から見た物流・モビリティビジネスの構造」を理解するために、統合報告書や決算説明資料、業界レポートにも目を通し、自分の経験をどう活かせるかを具体的な言葉で語れるように準備しました。

意思決定のポイント/自分の市場価値

評価されたのは、「現場感×事業構想」を両方持っているバランス感覚だった。
複数社の選考を受けた結果、最終的に内定を得たのは大手総合商社のモビリティ・物流領域の事業開発マネージャー職でした。最終面接では、「スタートアップ出身者が大企業に入ると、スピード感のギャップで苦労することも多いが、それをどう乗り越えるつもりか」といった本質的な質問も多く投げかけられました。

私が意識して伝えたのは、「スタートアップの良さだけを持ち込む」のではなく、「大企業の意思決定プロセスを理解したうえで、その中で前に進める工夫をしていく」というスタンスでした。また、これまでのプロジェクトで、現場のオペレーションを自ら手を動かして理解しつつ、経営層に対して投資の意義やリスクを整理してプレゼンしてきた経験は、「現場感と事業構想の両方を持っている人材」として評価されたようです。

一方で、書類選考が通りやすかったのは、物流・モビリティ・インフラ系の事業会社や、事業開発・投資部門を持つ企業でした。逆に、プロダクトマネージャーや純粋なコンサルティングファームなど、より抽象度の高い戦略寄りのポジションとは相性があまり良くないという感触も得られ、自分の市場価値が「現場と事業をつなぐポジション」にあることがよりクリアになりました。

オファー年収は950万円。裁量権や今後のポジションの広がり、グローバル案件への関与機会も含めて、中長期的にキャリアの軸を築けると判断し、入社を決意しました。

内定・転職後の変化

扱う金額も関わるステークホルダーも、一気に桁が変わった。
転職後は、モビリティ・物流領域における新規事業・投資案件の検討や、既存事業の再編・提携スキームの構築などを担当しています。スタートアップ時代と比べて、扱う金額の桁も関わるステークホルダーの数も圧倒的に増えました。国内外のパートナー企業、金融機関、行政、社内の複数部門など、多様な関係者と調整しながらプロジェクトを前に進める必要があります。

ポジティブな変化としては、まず年収が540万から950万に大きく上がったことで、将来を見据えた貯蓄や投資を考えられるようになった点があります。また、会社のブランドやネットワークを背景に、これまでなら会えなかったような経営者や海外パートナーとディスカッションできる機会も増え、日々の学びの深さが格段に変わりました。

一方で、ネガティブというほどではないものの、やはり意思決定のスピードやプロセスには大企業ならではの重さがあります。関係者を丁寧に巻き込み、リスクを洗い出し、ガバナンスを効かせた上で進めることが求められるため、「とにかく走ってから考える」スタイルには戻れません。その分、筋の通った提案や論点整理の精度は以前より高いレベルで求められていると感じています。

総じて言えば、「スタートアップの経験を否定するのではなく、より大きなフィールドで活かせるようになった」という感覚が強く、キャリアの土台を作り直せた手応えがあります。

メッセージと総括

スタートアップ出身だからこそ、総合商社や大手で活きる価値がある。
もし今、スタートアップやベンチャーで事業企画や営業、アライアンスなどに携わっていて、「このままここだけでキャリアを積んで良いのか」と迷っているなら、一度自分の経験を他社目線で棚卸ししてみることをおすすめします。

スタートアップ出身者は、スピード感や泥臭さ、現場感といった強みを持っていますが、それを「どんな市場仮説のもとで行ったのか」「どのようなプロセスで結果につなげたのか」という形で整理できれば、総合商社や大企業の事業開発ポジションでも十分に戦えると感じました。

転職エージェントは、各社の選考軸やポジションごとの期待値を教えてくれるうえ、自分では過小評価しがちな経験の価値を言語化してくれる存在でした。一方で、ダイレクトリクルーティングでは、企業の事業責任者から直接カジュアル面談のオファーをもらい、自分の志向や経験を率直にぶつけることができたのも大きな収穫です。

まだキャリアの軸が曖昧な段階であれば、まずはエージェントと対話しながら方向性を固めていくのが良いと思います。そのうえで、ある程度「自分はこの方向で勝負したい」というイメージが固まってきたら、ダイレクトリクルーティングを併用して、実際の転職市場の反応を確かめてみる。そうした二段構えのアプローチが、後悔の少ないキャリア選択につながるのではないかと感じています。

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