40代戦略コンサルの転職事例/AIガバナンス責任者へ/年収1350万→1250万+SO

42歳、外資系戦略コンサルティングファームでマネージャーとして多数のプロジェクトを率いてきた彼は、ここ数年の生成AIの進化に強い衝撃を受けていました。これまで高い付加価値とされてきたリサーチ、分析、資料作成の初期工程が、若手コンサルタントとAIの組み合わせによって短時間で形になるようになり、「自分が10年以上かけて磨いてきた武器が、確実に侵食され始めている」と感じたといいます。一方で、クライアント企業はこぞってAI活用を掲げるものの、ガバナンスやリスク管理の体制は追いついていない状況でした。このギャップにこそ新たなキャリアのチャンスがあると考え、彼は大手SaaS企業のAIガバナンス責任者というポジションへの転身を決断します。

人物プロフィール

年齢:42歳
性別:男性
転職前:外資系戦略コンサルティングファーム/マネージャー
転職後:大手SaaS企業/Head of AI Governance(AIガバナンス責任者)
転職前年収:1350万
転職後年収:1250万+SO
転職動機:生成AIの急速な進化により、戦略コンサルの作業工程の多くがAIと若手の組み合わせで代替され始め、自分の強みを「AIに置き換えられにくい責任領域」へシフトする必要性を痛感したため

ざっくりまとめると

・外資系戦略コンサルのマネージャーから大手SaaSのAIガバナンス責任者へ
・生成AIで調査・分析・資料作成の工程が自動化され、40代ハイクラスでも将来に危機感
・年収は1350万→1250万+SOと固定は微減だが、中長期のリターンと市場価値の伸びしろを優先
・AI導入を進めたい企業の「リスク・倫理・ガバナンス」の空白地帯に専門家として踏み込んだ
・AIに代替される側から、AIを統制し価値を最大化する側へキャリアを転換した事例

転職前のキャリアと悩み

AIがシニアコンサルの“経験値優位”を揺るがし始めた
外資系戦略コンサルでマネージャーとして働いていた頃、彼は「難易度の高い案件ほどシニアの経験値がものを言う」と信じていました。しかし、生成AIの実務利用が進むにつれ、その前提が少しずつ崩れていきます。若手アナリストがAIを駆使して、わずかな時間で市場調査のサマリや仮説パターンを複数案出してくる場面が増え、自身が時間をかけて積み上げてきた“情報整理力”や“資料構成力”と同等レベルのアウトプットを、スピードと量で超えてくることが当たり前になっていきました。

もちろん、最終的なストーリーづくりや経営層との対話の質はシニアの役割として残るものの、「作業工程の多くはAI+若手で十分なのではないか」と感じる瞬間が増えたのも事実です。体力的にもタフな環境で40代以降も第一線に立ち続けられるのかという不安も重なり、自分のキャリアを“AIに代替されにくい領域”へシフトさせる必要性を強く意識し始めました。

転職を意識したきっかけ

クライアントのAI導入プロジェクトで見えた“ガバナンスの空白地帯”
転機となったのは、複数のクライアント企業でAI活用戦略のプロジェクトを担当したことでした。経営陣は「生産性向上」「新規事業」「コスト削減」といったキーワードを掲げ、AI導入に前向きでしたが、現場の実態を見てみると、利用ルールやリスク管理は驚くほど手つかずのままでした。

どのデータを学習に使ってよいのか、機密情報の取り扱いはどうするのか、AIが出力した結果の責任は誰が負うのか、説明可能性やバイアスの管理をどう担保するのか――こうした問いに明確に答えられる担当者はほとんどおらず、「とりあえず便利だから使っている」という状態の会社も少なくありませんでした。

このとき彼は、「AI活用が進めば進むほど、ガバナンスとリスク管理の重要性は爆発的に高まる。ここを専門領域として押さえれば、AIに代替されるどころか、むしろ必要とされる側に回れる」と直感します。そこから、AI倫理や各国の規制動向、データガバナンスに関する情報収集を本格的に始めました。

転職活動内容

戦略コンサルのスキルを“AIガバナンス設計”に翻訳していった
転職活動の準備として、彼はまず自分の経験を「AIガバナンスにどう活かせるか」という観点で棚卸ししました。プロジェクトで行ってきたリスクアセスメント、コンプライアンス対応、ステークホルダー調整などは、そのままAIリスク管理にも通じると考え、事例ベースで整理。あわせて、AIガバナンスに特化した海外のレポートや実務書を読み込み、自分なりのガバナンスフレームワークをスライドにまとめました。

転職チャネルは、ハイクラス向けエージェントとダイレクトスカウトを併用。エージェントとは、AIガバナンス関連ポジションの市場感や報酬水準を確認しつつ、ダイレクトスカウトではSaaS企業やプラットフォーマーからのニーズを探りました。面接では、「戦略×リスク×AI」という掛け合わせで、経営目線からAI活用とガバナンス両方を語れる点が評価され、最終的に複数社からオファーを獲得することができました。

意思決定のポイント/自分の市場価値

固定年収マイナス100万。それでも“AIリスク領域の将来価値”を選んだ
その中で彼が入社を決めたのは、成長スピードの速い大手SaaS企業でした。全社的にAIを活用したプロダクト強化と業務効率化を進めている一方で、AIガバナンス体制はこれから整備していく段階。まさに“これからルールをつくるフェーズ”で裁量を持って動ける環境でした。

提示されたオファーは、固定年収ベースではコンサル時代より約100万円低い水準でしたが、ストックオプションが付与されていたこと、そして何より「AIリスク・ガバナンスの専門家」という肩書きと実績をつくれることが、中長期的な市場価値の観点から大きなメリットだと判断しました。「今の年収の多寡よりも、5年後・10年後にどんなラベルで呼ばれていたいか」を軸に意思決定した結果と言えます。

内定・転職後の変化

AIを“使う・使わせる・止める”判断を担うポジションの重さと面白さ
現在彼が担っているのは、AI利用ポリシーの策定、モデルリスク管理の枠組みづくり、データの取り扱いルール整備、社内研修の企画、法務・セキュリティ・開発との連携など、多岐にわたる業務です。

便利だからといって何でも許可するわけにはいかず、一方でリスクを恐れるあまりイノベーションを止めてしまっても本末転倒になります。そのバランスをとりながら、「どの領域で、どのレベルのAIを、誰が、どのような責任で使うのか」を具体的に設計していくプロセスは、戦略コンサル時代以上に経営視点が求められると感じているそうです。

AI導入が進めば進むほど、自分の関わるテーマが増えていく実感があり、「AIに仕事を奪われるどころか、AIのおかげで自分の専門領域が生まれた」と前向きに語っています。

メッセージと総括

AIに不安を感じたら、“逃げる”のではなく“ポジションを取りに行く”発想を
生成AIの進化は、40代以降のハイクラス人材にとっても他人事ではありません。むしろ、これまでの経験やスキルの一部がテクノロジーで代替される現実を、誰よりも肌で感じている世代かもしれません。ただ、その不安をきっかけにキャリアを諦めるのではなく、「AIが普及すればするほど必要になる領域はどこか」という視点でポジションを取りに行くことが重要だと彼は感じています。

エージェントは、自分では気づきにくい強みや市場価値を客観的に整理してくれる存在です。一方、ダイレクトリクルーティングでは、企業がどのような背景や課題感でポジションを設計しているのかを、ダイレクトに把握することができます。両方をうまく使い分けながら、「AIに代替されにくい責任領域」へのキャリアシフトを戦略的に描いていくことが、これからのハイクラス人材に求められるスタンスなのかもしれません。

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