29歳、AIに仕事を奪われる恐怖から「AIを操る司令塔」へ。年収100万アップの転身
「このままでは、私の仕事は数年でなくなる」──Chat GPTの登場に衝撃を受け、そう確信したのは29歳のWebライターでした。
かつては文字単価の安さと納期の短さに追われる日々。しかし彼女は、AIを敵視するのではなく「最強の部下」として扱う道を選びました。選んだ転職先は、AI技術を活用したマーケティング支援を行うテック企業。職種は「プロンプトエンジニア兼ディレクター」。年収は450万円から550万円へ。
「書く人」から「AIに書かせる人」へ。時代の波に飲み込まれず、波に乗り換えた彼女の鮮やかなキャリアチェンジの全貌に迫ります。
人物プロフィール
年齢:29歳
性別:女性
転職前:Web制作会社/SEOライター
転職後:AIテック系スタートアップ/プロンプトエンジニア・コンテンツディレクター
転職前年収:450万
転職後年収:550万
転職動機・テーマ:生成AIの台頭による「書く仕事」の将来不安から、AIを活用・制御する側へスキルを転用し、市場価値と年収の大幅アップを実現。
ざっくりまとめると
・29歳女性。Web制作会社でSEOライターとして勤務も、AIの台頭に将来の危機感。
転職前のキャリアと悩み
「量産型コンテンツを作る毎日。モニターの向こうに、自分の代わりが見えていた。」
新卒で入社したWeb制作会社では、SEOライターとして働いていました。「検索上位を取るため」という名目で、毎日5000字の記事を3本書き上げる日々。求められるのは独創性よりも「キーワードの網羅性」と「スピード」でした。最初は文章を書く仕事に就けた喜びがありましたが、次第に自分が情報のパッチワークを作るだけの機械のように思えてきました。
年収は450万円。業界平均よりは少し良いものの、労働集約型の働き方で、手を止めれば収入が止まる恐怖がありました。さらに追い打ちをかけたのが生成AIの台頭です。自分が3時間かけて書いた構成案を、AIが一瞬で出力するのを見た時、背筋が凍る思いでした。「このレベルなら、クライアントは私よりAIを選ぶ」。漠然とした不安が、明確な危機感に変わった瞬間でした。
転職を意識したきっかけ
「AIは“敵”ではなく、言葉で動かす“馬”だと気づいた。」
転職を意識したのは、皮肉にもAIに敗北感を味わった後でした。試しにAIツールを使い倒してみると、あることに気づきました。それは「指示(プロンプト)の出し方一つで、アウトプットの質が劇的に変わる」ということ。AIは優秀ですが、文脈やニュアンスを理解する「人間の指示」がなければ機能しないのです。
「これからは“書くスキル”ではなく、“AIに書かせる設計力”が価値になる」。そう仮説を立て、ライターとしての実績ではなく、AIを活用していかに効率的かつ高品質なコンテンツラインを作れるか、という「ディレクション能力」を売りにしようと決意しました。沈みゆく船から脱出するのではなく、新しい船の操縦士になるための転職活動を始めました。
転職活動内容
「ポートフォリオは“記事”ではなく“命令文”を見せた。」
転職活動では、これまでの執筆実績に加え、独自に作成した「プロンプト集と生成結果の比較レポート」をポートフォリオに加えました。「一般的な指示だとこうなるが、私が前提条件を定義するとここまで精度が上がる」という実証データを提示し、言語化能力がAI操作に直結することをアピールしました。
利用したのは、IT・Web業界に強い特化型エージェントと、ビズリーチなどのスカウト型サービスです。当初、従来型の編集プロダクションからは「ライター」としてのオファーしか来ませんでしたが、テック系スタートアップやSaaS企業からは「AIの出力精度を高められる人材」として強い関心を持たれました。特にエージェント経由で紹介された企業は、エンジニアとビジネスサイドの橋渡しができる「言語のプロ」を求めており、私のライター経験が意外な形で評価されることになりました。
意思決定のポイント/自分の市場価値
「“言葉”を“技術”として評価してくれる場所を選んだ。」
最終的に、AIを活用したマーケティングオートメーションツールを開発するスタートアップに入社を決めました。提示された年収は550万円。前職から100万円アップ。
この会社を選んだ理由は、経営陣が「AIは万能ではない。それを使いこなす人間の“言語能力”こそが差別化要因になる」と明言していたからです。書類選考で落ちた企業の多くは「AIを使えばライターは不要=コスト削減」と考えているところでしたが、入社した企業は「AI×人間で付加価値を最大化する」という攻めの姿勢でした。自分のスキルが「コスト」ではなく「投資対象」として見られる環境こそが、自分の市場価値を最大化すると確信しました。
内定・転職後の変化
「自分が書くよりも、100倍の量を100倍の速度で生み出す快感。」
現在は、自社ツールのプロンプト開発や、クライアント企業のコンテンツ生成フローの設計を担当しています。以前のように腱鞘炎になるほどタイピングすることはなくなりました。代わりに、どうすればAIが意図通りの文章を書くか、論理構造を組み立てる「設計」に時間を使っています。
ポジティブな変化は、何より「未来への恐怖」が消えたことです。テクノロジーの進化が、自分の職を奪う脅威から、自分を助ける武器に変わりました。一方で課題もあります。AIの進化速度が凄まじく、先週の正解が今週は古くなる世界です。常にキャッチアップし続けるプレッシャーはありますが、ルーチンワークに埋もれていた頃に比べれば、刺激的で健全な悩みだと感じています。
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