32歳、「Excel職人」の限界を感じて。AI時代に事務職が選んだ生存戦略
「そのマクロ、ChatGPTなら3秒で作れますよ」
中堅商社の営業事務として10年。複雑な関数やVBAを操り、「社内の魔法使い」として重宝されてきた32歳の女性。でも、AIの進化は彼女の“職人芸”を一瞬にして陳腐化。「このままでは、私は便利な便利屋のまま終わる」。そう危機感を抱いた彼女が選んだのは、事務を辞めることではなく、事務の経験を活かして「ロボット(AI・RPA)の上司」になることでした。
ルーチンワークからの脱却、そして年収480万から600万へのジャンプアップ。AI失業の筆頭と言われている事務職のからの転身劇です。
人物プロフィール
年齢:32歳
性別:女性
転職前:中堅専門商社/営業事務(リーダー職)
転職後:DXコンサルティング企業/DX推進コンサルタント・RPA導入支援
転職前年収:480万
転職後年収:600万
転職動機・テーマ:生成AIや自動化ツールの台頭による「事務職」の価値低下への危機感から、現場業務の知見を活かして「自動化を設計・導入する側」へキャリアチェンジ。
ざっくりまとめると
・32歳女性。商社の営業事務としてExcelマクロ等を駆使していたが、AIの台頭に限界を感じる。
・「作業者」ではなく、業務フローを設計する「DX推進」への転身を決意。
・職務経歴書で「事務処理能力」ではなく「業務改善の実績」を強調し、IT未経験の壁を突破。
・DX支援企業へ転職し、年収120万UP。現場を知る強みを活かし、企業のDXを成功させている。
転職前のキャリアと悩み
「私が10年かけて磨いたスキルは、AIの“標準機能”になってしまった。」
新卒で入社した専門商社で、営業事務として働いていました。私の強みはExcelでした。手作業で3時間かかる集計を、VBAマクロを使って5分で終わらせる。そのスキルのおかげで、営業部からは「○○さんがいないと回らない」と頼りにされ、それが私のやりがいでした。
しかし、生成AIの登場が状況を一変させました。新入社員が「AIにコードを書かせて作りました」と、私より高機能なツールを翌日に持ってきたのです。ショックでした。さらに会社はコスト削減のため、事務職の派遣切り替えやBPO(外部委託)を進め始めました。「正確で速い」だけの事務員は、もう正社員としては求められていない。年収480万円、昇給なし。天井が見えた閉塞感に押しつぶされそうでした。
転職を意識したきっかけ
「現場を知らないITベンダーへの怒りが、次の道を示してくれた。」
転機は、会社が導入した新しい業務システムが大失敗したことでした。ITベンダーが作ったそのシステムは、現場の業務フローを無視した使いにくい代物で、かえって残業が増えてしまったのです。
その時、直感しました。「システムを作る人(エンジニア)は現場を知らない。現場の人(事務)はシステムを知らない。この“通訳”ができる人が一番必要なんじゃないか?」。
AIやITは魔法の杖じゃない。それを現場に合わせて調整する「翻訳者」こそが、これからの時代に生き残るポジションだ。そう確信し、単なる事務職ではなく、業務フローそのものを再設計する「DX推進」という職種へターゲットを絞りました。
転職活動内容
「“何ができるか”ではなく、“何を改善したか”に書き換えた。」
転職活動当初、エージェントからは「32歳・IT未経験」として厳しい評価を受けました。そこで私は職務経歴書をガラリと変えました。「受発注処理:月500件」といった作業量の記述を消し、「アナログだった受注フローをVBAで自動化し、部内の残業時間を月40時間削減した」という“課題解決プロジェクト”の記述に変えたのです。
アプローチ先も、技術力を問われる開発会社ではなく、「顧客の業務改善」を行うDXコンサルやBPO企業に絞りました。面接では「私はコードは書けませんが、事務員がどこでミスをするか、どこでサボりたくなるかは誰よりも熟知しています」とアピール。これが「現場に定着するDX」を求めていた企業のニーズに合致しました。
意思決定のポイント/自分の市場価値
「事務の経験が、これほど高く売れるとは。」
最終的に、中堅・中小企業のDX支援を行うコンサルティング企業に入社を決めました。年収は600万円。前職から220万円アップという、事務職では考えられない提示でした。
この会社に決めた理由は、「ハイテクな技術」よりも「泥臭い現場改善」を重視していたからです。書類選考で落ちたのは大手SIerなどの「技術ありき」の会社でしたが、受かったのは「現場のお局様をどう説得して新しいツールを使わせるか」といった人間臭い課題に悩む会社でした。私の事務としての“現場感覚”と“コミュニケーション能力”が、ここでは希少なスキルとして高く評価されたのです。
内定・転職後の変化
「AIに使われる側から、AIを使う側へ。」
現在は、クライアント企業の現場に入り込み、業務の洗い出しやRPA(ロボットによる自動化)の導入支援を行っています。「以前の私のような事務員」の方々に対し、「この作業はロボットに任せて、もっとクリエイティブな仕事をしましょう」と提案し、感謝されるのが最高の喜びです。
もちろん、新しいツールの勉強は大変ですし、時には現場からの反発もあります。でも、「いつか仕事がなくなる」と怯えていた頃のストレスはありません。むしろAIが進化すればするほど、私の提案の幅が広がる。「変化が味方になる」ポジションに身を置けたことが、何よりの収穫です。
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