27歳 デスクワーカーからAI代替リスクの低いエッセンシャルワーカーへ 葛藤と遣り甲斐のはざま/年収340万

今回取材したのは、新卒で通信中小企業の総務部へ。近年のAI進化で自分の仕事の将来に不安を抱え、エッセンシャルワーカーに転身した20代女性の転職事例です。ご覧ください。

人物プロフィール

年齢:27歳
性別:女性
転職前:通信系企業(総務・庶務)
転職後:総合ビルメンテナンス企業(特殊清掃・環境衛生管理)
転職前年収:350万
転職後年収:340万
転職動機:AIで失業する事務職に危機感を覚えて影響の少ないエッセンシャルワーカーへ転身しようと思ったので

ざっくりまとめると

・新卒で総務部に配属。上司の指示でAIやRPA導入を進めるうち、「導入完了=自分の仕事消滅」という不安を感じる。

・モニターの中の数字ではなく、「汚いものを物理的に綺麗にする」清掃職の成果に圧倒的なカタルシスを感じ、転職活動を始める。

・現場で汗をかきつつ、得意のPCスキルで報告書のデジタル化も推進。「現場も事務もできるレア人材」として独自の立ち位置を確立。

転職前のキャリアと悩み

お掃除ロボットが詰まるのを直すとき、惨めになった
前職は、いわゆる「オフィスの何でも屋さん」でした。備品の発注とか、代表電話の取次とか。 でもここ1〜2年で、電話は自動音声になり、備品はAmazonビジネスで自動補充になり、私の仕事は「AIがエラーを吐いた時の再起動係」みたいになっていきました。

決定打だったのは、ある日の残業中。オフィスを巡回しているお掃除ロボットが、コードに絡まり動けなくなっていました。それを直してあげた時、ふと「私、ロボットの世話係をするために大学出たんだっけ?」と思い、このまま30歳になって、いよいよ全部自動化されたら、私は失業じゃん・・と。

転職を意識したきっかけ

汚水がバキュームで吸われていく時の「快感」
業者の人がカーペット清掃に入っているのをぼーっと見ていたんです。 専用の機械から洗剤が出て、ブラシが回って、真っ黒な汚水がバキュームに吸い込まれていく。そのあとには、新品みたいになった床がある。

それを見た時、「うわ、気持ちいい」って、素直に感動したんです。 ここには「前年比105%」とか「コンセンサス」みたいなフワッとした話がない。マイナスが、自分の手でゼロになる。物理的に世界が綺麗になる。 「AIはデータを整理できても、床にこびりついたガムは剥がせないよな」。そう思ったら、この仕事が急に、最強の技術職に見えてきたんです。

転職活動内容

“半信半疑でも事務職よりは将来有望?
転職活動は、正直しんどかったです。エージェントの人には「えっ、事務から清掃ですか? もったいなくないですか?」って引かれるし、親に報告したら「なんでわざわざ汚れる仕事を選ぶの」と。

でも面接では、あえてこう言いました。 「PC仕事はAIに奪われます。でも、人がそこで暮らす限り、建物は絶対に汚れます。私は『なくならない仕事』がしたいんです」 この話をしたら、今の会社の役員(叩き上げの職人さん)が「よくわかってるねぇ!」と身を乗り出してくれて。その熱量のまま採用が決まりました。

意思決定のポイント/自分の市場価値

ITスキルちょっと&現場のハイブリッド人材が重宝される
この業界を選んだ勝算は一応ありました。「ITに強い若手が圧倒的にいない」ことです。 現場の職人さんは腕は超一流なんですが、報告書を作るのにスマホの写真をコンビニで印刷して、それを紙に糊付けして・・みたいなことをやっていて。

なので、「現場でポリッシャー(床磨き機)も回せるし、事務所でマクロも組める」。 ITが遅れている業界なら私の市場価値も相対的に高いと思います。

内定・転職後の変化

身体はバキバキだけど、日曜の夜に憂鬱にならない
現場は、正直キツイです。重い機械を運ぶし、夏場のワックス掛けはサウナだし、トイレ掃除だってあります。ネイルも諦めました。 でも、事務職とは違いなぜか精神的な疲れはないです。 「この資料、誰が読むの?」みたいな無意味な作業が一切ないから。「ここ汚れてるね」→「綺麗にした」→「ありがとう」。このサイクルの速さが心地いい。

今は現場7割、事務3割くらい。最近は「Sさんがシフト組んでくれると無駄がない」ってパートさん達にも頼りにされてて楽しくやっています。

メッセージと総括

プライドを捨てたら、生存戦略が見えてきた
「清掃なんて」っていうプライドを捨てたら、そこはブルーオーシャンでした。 ホワイトカラーの仕事って、突き詰めると「代わりがいる」ことが多い。でも、夜中の商業施設で、特殊な洗剤を調合して床をピカピカにしている時の私は、誰にも代替できないプロフェッショナルだと胸を張れます。

もし今、AIに仕事を奪われるのが怖いなら、「物理的な手触り」のある場所に降りてきてみてください。 汗をかいて、汚れて、それを綺麗にする。人間として当たり前のことを仕事にするの、意外と悪くないと思います。

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