外資AI半導体の高年収エンジニアからスタートアップへ|自社株の成長を背に、37歳で“技術を事業に近づけた”転職
今回の事例は、AIブームの中心にいる外資企業で、技術的にも報酬的にも恵まれたポジションにいた37歳男性の転職です。
環境だけ見れば、動く理由は少ない。むしろ、そこに残り続ける方が“正解”に見えるキャリアでした。
それでも彼は、もっと小さく、もっと未整備で、技術の判断がそのまま事業の速度に跳ね返るスタートアップへ移ります。
背景にあったのは、勢いではありません。
長年のRSU付与と株価上昇によって、給与とは別の資産的な余白ができていたこと。その余白が、「今の年収を守るために残る」ではなく、「次にどこで自分の技術を使うか」で判断する余地を作っていました。
人物プロフィール
年齢:37歳
性別:男性
転職前:外資AI半導体企業/Senior Field Applications Engineer
転職後:国内AI系スタートアップ/Head of Platform Engineering
転職前年収:2300万円(現金+賞与+RSU込み)
転職後年収:1550万円(現金)+SO(ストックオプション)
転職動機・テーマ:顧客の技術導入を成功させる役割から、自社プロダクトの成長に技術責任を持つ役割へ移りたかった。外資大手エンジニアからスタートアップへ。自社株の成長を背景に、年収より当事者性を選んだ転身。
ざっくりまとめると
・私は外資で、AI基盤やGPU活用を顧客の現場に落とし込む“技術の実装側”に長くいた
・ただ、導入支援が成功しても、それはあくまで顧客側の成功であって、自分のプロダクトを育てている感覚とは違った
・年収を下げる決断ができたのは、RSUの値上がりと一部売却で、生活の防衛ラインがかなり厚くなっていたから
・転職後は整っていないものばかりだが、「技術判断がそのまま事業速度を変える」感覚を取り戻せた
転職前のキャリアと悩み
前職では、外資半導体大手でSenior Field Applications Engineerとして、顧客の要件に合わせて、GPU、モデル、インフラ、パフォーマンス、運用まで含めて「実際に動く状態」に持っていく役割を担っていました。
技術的には面白いし、世の中のAI投資の真ん中にいる感覚もありました。しかも会社全体の勢いも強く、RSUの価値は思った以上のスピードで膨らんでいきました。
外から見れば、かなり良い状態だったと思います。
でも、自分の中では、少しずつ別の感情が大きくなっていました。
私は、顧客の成功には深く関われる。
ただ、自分の側で「何を作るか」「どう育てるか」「何を捨てるか」を決めているわけではない。
導入が成功しても、あくまで私は“技術的に正しく届ける側”です。
プロダクトそのものを持って、その伸び方に責任を持つ感覚とは、やはり違いました。
技術者として、それが少しずつ物足りなくなっていきました。
転職を意識したきっかけ
きっかけは、ある国内AIスタートアップのプロダクトを見た時でした。
正直、完成度は高くなかったです。
仕組みも荒いし、スケールを見据えると不安な部分も多い。
でも逆に、その未完成さがすごく印象に残りました。
ここでは、インフラの選び方ひとつ、API設計ひとつ、監視の置き方ひとつで、プロダクトの使いやすさも、伸びる速度も変わる。
大企業のように、正しいものをさらに磨くのではなく、そもそも“何を正解にするか”から関われる。
その感じが、自分にとってはかなり魅力的でした。
前職では、私は重要な役割ではありましたが、あくまで“顧客側の成功を支える人”でした。
でも本音では、もう少し自分の側に責任を引き寄せたかった。
顧客のプロジェクトではなく、自分たちのプロダクトを、技術で前に進める方に行きたい。
そう思うようになりました。
ただ、こういう転職は、勢いだけではしづらいです。
特に、現金年収が下がるのは事実だったので。
ここで効いてきたのが、やはりRSUでした。
自社株(RSU)の成長が、転職の怖さを現実的な範囲まで下げた
私はここ数年で、給与明細を見る感覚よりも、株式報酬の評価額を見る感覚の方が大きくなっていました。
毎年付与されるRSUが積み上がり、会社の株価が伸びる。
その結果、
・保有している株式の評価額が大きく膨らんだ
・権利確定のたびに一部を売却して、現金として手元にも残していた
・「もし数年、年収が下がっても生活は崩れない」という確信が持てた
という状態になっていました。
ここで大事だったのは、資産額の大きさそのものではありません。
今の年収を維持しないと一気に不安になる、という状態ではなくなっていたことです。
この差はかなり大きいです。
年収ダウンを怖がらなくなった、というより、
「年収ダウンを“計算可能なリスク”として扱えるようになった」
と言った方が近いかもしれません。
そのおかげで、給与水準だけではなく、「この先どこで一番濃い仕事ができるか」で判断できるようになりました。
転職活動内容
転職活動は、広く受けるというより、かなり狭く深く見ていました。
同じくらいの報酬を出す外資に移る選択肢もありましたが、それをすると結局、また似た構造の仕事に戻るのが分かっていたからです。
エージェントには、最初からかなり具体的に伝えました。
私は次に、単なるシニアICとして入りたいわけではない。
必要なのは、
・技術戦略だけでなく、プロダクトの優先順位に関われること
・組織づくり(採用・育成・レビュー基準)まで含めて持てること
・経営と開発の距離が近いこと
この3つでした。
つまり、「より良い条件の転職」ではなく、
技術を事業に直結させる転職をしたかったんです。
知人経由やダイレクトスカウトで話した会社でも、私は技術スタックを最初の判断材料にはしませんでした。
見るのは、もっと根本的なことです。
この会社は、何を優先していて、何を後回しにしているのか。
リソースが足りない前提で、意思決定ができているか。
技術の正しさと事業のスピードのバランスを、経営と会話できるか。
そこが曖昧な会社は、どれだけテーマが面白くても、自分には合わないと思いました。
面接で話したのも、過去にやった大規模案件の派手な話ではありません。
入社したら、どこから触るか。
どの負債は今すぐ返し、どの負債はしばらく抱えるか。
どの採用を先にやるか。
可用性・開発速度・将来の拡張性のどこに、今は比重を置くか。
そういう“あまり映えないけれど、実際に必要な話”を中心にしていました。
たぶん見られていたのは、技術力の高さそのものより、
「不完全な状況で、順番を決められる人かどうか」
だったと思います。
意思決定のポイント/自分の市場価値
転職を決める時、私が見ていたのは3つでした。
一つ目は、技術の判断が、そのまま事業の差になるか。
前職のように、技術的に難しくても、自分の仕事が“プロダクトの一部”に留まる状態ではなく、
設計や優先順位がそのまま成長率に跳ね返る場所に行きたかった。
二つ目は、自分が開発組織の形にも責任を持てるか。
37歳で転職する以上、コードを書くことだけに戻りたいわけではなかったです。
採用、育成、基準、文化。
そこに触れられないなら、今のタイミングで動く意味は薄いと思っていました。
三つ目は、年収ダウンを生活の不安に直結させずに済むか。
ここは感覚ではなく、かなり現実的に見ました。
RSUの現金化も含めて、どのくらいの下振れなら平気かを、自分なりに整理していました。
自分の市場価値については、最近はかなりシンプルに考えています。
私は「高度な技術知識を持つ人」ではあるけれど、それだけでは足りない。
今出したい価値は、
曖昧な状況から、何を作るか・何を後回しにするかを決めて、チームごと前に進めること
だと思っています。
スタートアップに行くなら、その価値がもっとも露わになる場所に行きたかったんです。
内定・転職後の変化
転職後は、やはり前職ほど整っていません。
開発体制も、監視も、ドキュメントも、ルールも、比べれば全然粗いです。
最初は、少しの判断ミスが大きく響く怖さもありました。
でも、私はそれをネガティブには感じませんでした。
前職では、正しいものをさらに強くする仕事が多かった。
今は、まだ正解がないところで、“とりあえず前に進む正解”を作る仕事です。
その違いが、自分にはとても大きかったです。
もちろん、責任は重いです。
でもその分、意味も分かりやすい。
自分が採用した人が入ることで、開発速度が変わる。
自分が優先順位を変えることで、リリースの質が変わる。
自分が先送りした負債が、数か月後にプロダクトの伸びに影響する。
この“返ってくる感じ”は、今の方が圧倒的に強いです。
年収は下がりましたが、生活の安心感は大きくは揺れていません。
それは、前職で積み上がった株式報酬が、想像以上にしっかりした“守り”になっていたからだと思います。
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