治す医療の先で、支える医療を選んだ|大学病院の勤務医から在宅医療へ移った35歳医師の転職
今回ご紹介するのは、大学病院で循環器内科医として働いていた35歳男性の転職事例です。
高度急性期の現場で、診断・治療・救急対応・カテーテル治療を含む医療に携わり、医師として着実に経験を積んできた一方で、次第に「治療が終わった後の患者さんの生活」に、もっと関わりたいという思いが強くなっていきました。
転職先に選んだのは、在宅医療クリニックの院長候補です。
病院の中で治す医療から、生活の中で支える医療へ。
医師としての専門性を捨てたのではなく、専門性の使い方そのものを変えた転職でした。
人物プロフィール
年齢:35歳
性別:男性
転職前:大学病院/循環器内科医
転職後:在宅医療クリニック/院長候補
転職前年収:1,500万円(当直・各種手当込み)
転職後年収:1,800万円(オンコール・役職手当込み想定)
転職動機・テーマ:急性期の治療だけではなく、治療後の生活や人生まで含めて、患者さんに継続的に関わる医療を実践したかったため。大学病院勤務から在宅医療へ。医療の重心を“治療”から“生活支援”へ移した転身。
ざっくりまとめると
・私は大学病院で、循環器内科医として急性期医療に携わってきました。
・ただ、経験を積むほどに、「救命や治療の先にある患者さんの生活」に、もっと関わりたいと思うようになりました。
・転職の軸は、勤務条件だけではなく、医師としてどこまで患者さんの人生に伴走できるか、という点でした。
・転職後は、治療方針だけでなく、家族、生活環境、多職種連携まで含めて判断する場面が増え、医療の見え方が大きく変わりました。
転職前のキャリアと悩み
前職では、大学病院で循環器内科医として勤務していました。
外来、病棟、救急対応、当直、カテーテル関連の対応まで、いわゆる急性期医療の現場で日々診療していました。
若い頃の私は、その環境に強いやりがいを感じていました。
病態を見極めて、必要な治療を行い、状態を改善させる。
医師としての技術や判断力を鍛えるには、非常に密度の高い環境でした。
実際、循環器内科は判断のスピードも求められますし、患者さんの状態も大きく動きます。
そうした現場で経験を積めることに、大きな意味を感じていました。
専門性を高めるうえでも、このキャリア自体に迷いはありませんでした。
一方で、年数を重ねるほどに、別の思いも強くなっていきました。
それは、治療が終わったあと、患者さんがどう生きているのかを、私は十分に見られていないという感覚です。
急性期の現場では、命を救うこと、状態を安定させること、再発を防ぐことが最優先です。
それ自体は間違いなく重要です。
ただ、退院後にその方がどのように暮らし、どこで困り、何を諦め、家族がどれだけ負担を抱えているのかまでは、病院の中だけでは見えにくい。
私はそこに、少しずつ物足りなさを感じるようになっていました。
転職を意識したきっかけ
転職を強く意識したのは、心不全で何度も入退院を繰り返す高齢患者さんを担当したことがきっかけでした。
入院中はしっかり状態を整えられる。
治療方針も適切で、退院時の説明もしている。
それでも、数か月後にまた状態を悪化させて戻ってくる。
そのサイクルを何度か経験する中で、私は次第に、「病院の中だけでは、解決できないことが多い」と感じるようになりました。
問題は、処方や手技だけではありませんでした。
食事、服薬、生活動線、家族の支援体制、通院の負担、本人の理解度。
そうした“生活の前提”が、病状の安定に大きく影響していました。
その時に思いました。
私は、治療そのものには関われている。
でも、患者さんが病気と付き合いながら暮らしていく日常には、ほとんど関われていない。
もし本当に再入院を減らし、その人の生活を守りたいなら、病院の外に出ていく必要があるのではないか、と。
この感覚が、在宅医療に興味を持つ大きなきっかけになりました。
転職活動内容
転職活動では、最初から「より条件の良い病院に移る」ことは考えていませんでした。
もちろん年収や働き方も重要ですが、今回の転職で変えたかったのは、勤務先よりも医師としての関わり方だったからです。
そのため、検討先として見ていたのは、
・在宅医療クリニック
・訪問診療に力を入れている医療法人
・将来的に拠点運営やチームマネジメントにも関われる環境
でした。
選考で一貫して伝えていたのは、
私は急性期を否定したくて転職するのではない、ということです。
大学病院で積んだ経験は、自分の土台です。
ただ、その経験を「病院の中だけで使う」のではなく、もっと生活に近い場所で活かしたい。
この順番で話していました。
また、在宅医療への転職では、「急性期出身の医師が、本当に在宅に適応できるか」を見られることも多いです。
そこに対しては、
・急変時の判断力
・多疾患併存の患者さんへの全身管理
・入退院を含めた病院連携
・専門性を持ちながらも、全体を見て優先順位を決める力
を、自分の強みとして整理して伝えていました。
さらに、院長候補というポジションだったため、診療だけでなく、
・多職種との連携
・クリニック運営
・医師以外のスタッフとの役割分担
・地域連携先との関係構築
に関心があることも、明確に伝えていました。
意思決定のポイント/自分の市場価値
転職を決める時、私が見ていたのは3つでした。
一つ目は、患者さんの生活まで見られるかです。
私はもう、病院の中で治療を完結させることだけではなく、その後の生活まで含めて関わりたいと考えていました。
そのため、診療の舞台が「病室」ではなく「生活の場」であることを重視しました。
二つ目は、医師としての判断が、チーム医療の中で活かせるかです。
在宅医療は、医師だけで完結しません。
看護師、相談員、事務、ケアマネジャー、訪問看護、家族など、多くの人と連携しながら診療が進みます。
私は、その中で自分の判断がどう機能するかを重視していました。
三つ目は、専門性を失わずに、役割を広げられるかです。
循環器内科として積んできた経験を、単に“辞める”形にはしたくありませんでした。
むしろ、心不全や慢性疾患の管理を、在宅という文脈でより広く活かせることを重視しました。
自分の市場価値については、
私は「循環器の専門医」であるだけではなく、
急性期での判断力を持ちながら、全身管理と優先順位付けができる医師
だと考えています。
在宅医療では、その強みが、病気だけではなく生活全体を見る力として活きると感じていました。
内定・転職後の変化
転職後にまず感じたのは、診療の前提が大きく変わるということでした。
病院では、必要な検査も、人手も、設備も比較的そろっています。
一方で在宅では、限られた情報、限られた時間、限られた環境の中で判断しなければなりません。
最初は、その違いに難しさを感じる場面もありました。
ただ、その分だけ、患者さんの見え方は大きく変わりました。
病院では“病気を持った患者さん”として見ていた方を、在宅では“生活者としての患者さん”として見ることになります。
どういう部屋で過ごしているか。
どこに段差があるか。
誰が食事を用意しているか。
服薬を誰が管理しているか。
そうした情報が、診療の一部として自然に入ってきます。
この変化は、私にとって非常に大きいものでした。
病院の中では見えなかったものが、在宅でははっきり見える。
その結果、治療方針も、説明の仕方も、家族への関わり方も変わってきます。
また、院長候補という立場になったことで、診療だけでなく、チーム運営や拠点全体の動きにも意識が向くようになりました。
誰に何を任せるか。
どの連携先とどう関係を作るか。
どこで無理が生じているか。
そういった視点が増えたことで、医師としての仕事の輪郭自体が広がった感覚があります。
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