急性期の経験を“予防”に翻訳する|33歳女医が健診の現場で選んだキャリアの再設計
今回ご紹介するのは、急性期病院で内科系の勤務医として救急・病棟対応に携わっていた33歳女性医師の転職事例です。
救急外来や入院対応の現場で臨床力を磨きながら働いてきた一方で、次第に「病気が進んでから治す」よりも、「病気になる前に防ぐ」医療に重心を移したいと考えるようになりました。
転職先に選んだのは、健診・予防医療を中心とする医療機関です。
外から見ると“急性期を離れた”ように見えるかもしれませんが、本人にとっては、医師としての責任を軽くしたのではなく、介入するタイミングを前倒しにした転職でした。
人物プロフィール
年齢:33歳
性別:女性
転職前:急性期病院/内科系勤務医(救急・病棟)
転職後:健診センター/予防医療(健診・人間ドック・保健指導連携)
転職前年収:1,300万円(当直・各種手当込み)
転職後年収:1,150万円(健診+役割手当想定)
転職動機・テーマ:治療の現場だけでなく、発症前・重症化前の段階で介入し、長期的に健康を支える医療に関わりたかったため。急性期から健診・予防医療へ。医師としての介入ポイントを「治療」から「予防」へ移した転身。
ざっくりまとめると
・私は急性期病院で、救急対応や入院管理を通じて臨床力を積み上げてきました。
・ただ、経験を積むほどに「もっと早い段階で介入できていれば防げた」と感じるケースが増えていきました。
・転職の軸は、勤務負荷の軽減だけではなく、医師として価値を出す場所を“治療前”へ移すことでした。
・転職後は、診断や薬物調整よりも、リスク評価・生活介入・継続支援の設計が中心となり、医療の見え方が変わりました。
転職前のキャリアと悩み
前職では、急性期病院で内科系の勤務医として働いていました。
救急外来、入院患者の主治医業務、当直、コンサルト対応など、臨床の現場で必要なことを一通り経験してきました。
若い頃の私は、この環境に大きな意味を感じていました。
状態が不安定な患者さんを前に、必要な検査を選び、鑑別を進め、治療方針を決める。
短い時間の中で判断を積み上げていくことには、医師としての手応えがありました。
一方で、年数を重ねるほどに、別の感情も強くなっていきました。
それは、救急や入院で診る患者さんの多くが、「生活習慣」「受診の遅れ」「通院中断」「健診未受診」など、もっと手前の段階に原因を抱えているという事実です。
もちろん、急性期の現場では、まず命を守ることが最優先です。
ただ、治療が一段落したあとに、「この方はもっと前から介入できたはずだ」と感じるケースが少なくありませんでした。
糖尿病や高血圧を放置していた結果、心不全や脳血管障害を起こす。
脂質異常症の管理が不十分で、虚血イベントに至る。
そうしたケースを繰り返し見るうちに、私は「治療が必要になってから出会う医療」に限界を感じるようになりました。
転職を意識したきっかけ
転職を強く意識したのは、比較的若い年齢で重症化して搬送されてきた患者さんを担当したことがきっかけでした。
検査をすると、生活習慣病のコントロール不良が長く続いていたことが分かる。
ただ、本人は忙しさや自覚症状のなさから、健診を受けていない、あるいは受けても放置していた。
結果として、ある日突然、救急搬送される。
もちろん、救急の現場では救命に集中します。
ただ、治療を進めながら私はずっと考えていました。
この状態になる前に、誰かがもう一段早く介入できていれば、本人の人生の損失は小さかったのではないか、と。
急性期医療は確かに重要です。
ただ、私は医師として、救命の現場だけではなく、重症化させない医療にも責任を持ちたいと思うようになりました。
「治す」だけではなく、「起こさない」ことに価値を出す。
その方向に、自分の働き方を合わせたいと考えるようになりました。
転職活動内容
転職活動では、「健診に行く」こと自体がゴールではありませんでした。
私がやりたかったのは、健診結果を“指摘して終わり”にしない、ということです。
そのため、転職先を見るときには、次のような点を重視しました。
・健診・人間ドックの結果を、生活習慣や行動変容へ繋げる設計があること
・保健師・管理栄養士・企業担当者など多職種との連携が機能していること
・受診者のフォロー(再検査・精査受診・継続管理)まで設計されていること
・健診の量だけではなく、質と継続を重視していること
選考で一貫して伝えていたのは、私は急性期を否定したくて転職するわけではない、ということです。
急性期で身につけた鑑別力やリスク判断は、自分の土台です。
ただ、その土台を「病気が起きた後」だけで使うのではなく、「起きる前」にも使いたい。
この順番で話していました。
また、健診領域では「臨床から離れて大丈夫か」という見られ方をされることがあります。
そこに対しては、私は逆に、急性期で見てきた重症例の経験があるからこそ、健診結果の危険度をより立体的に説明できると考えていました。
数字の異常が「どの未来に繋がり得るか」を実感をもって語れる点は、予防医療の現場でも価値になると伝えていました。
意思決定のポイント/自分の市場価値
転職を決める時、私が見ていたのは3つでした。
一つ目は、健診を“入口”として、継続支援まで繋げられるかです。
検査結果を説明して終わるだけでは、やりたかった予防医療にはなりません。
行動変容や継続受診に繋がる設計があるかを重視しました。
二つ目は、多職種で支える仕組みがあるかです。
生活習慣の改善は、医師だけでは完結しません。
保健師、栄養士、企業の健康管理担当などと連携できる体制があるかを重視しました。
三つ目は、医師としての判断が活きる場面があるかです。
健診はルーチンに見えやすいですが、実際にはリスクの拾い上げや、受診勧奨の優先順位付けが重要です。
私は、急性期で培った判断力を、予防の現場で使えることを重視しました。
自分の市場価値については、私は「内科医として診断できる」だけではなく、
急性期で見てきたリスクを踏まえて、健診結果の意味を“未来のシナリオ”として説明できる医師
だと考えています。
その力は、予防医療でこそ価値があると感じました。
内定・転職後の変化
転職後にまず感じたのは、医療の“時間軸”が変わるということでした。
急性期では、目の前の症状や急変に対応し、短い時間で判断することが多いです。
一方、予防医療では、数か月〜数年単位で健康を支える視点が求められます。
そのため、診療の中心も変わりました。
治療薬の選択や急変対応よりも、
・リスクの見立て
・受診者の優先順位付け
・行動変容のハードル設計
・継続フォローの仕組みづくり
が重要になります。
最初は、急性期に比べて“成果が見えにくい”と感じる場面もありました。
ただ、継続受診や精査受診が進み、重症化を防げたと実感できるケースが増えると、手応えはむしろ大きくなりました。
救急で出会う前に支えられた、という感覚があるからです。
また、働き方の面でも変化がありました。
当直や救急対応が減り、生活リズムは整いました。
ただ、これは単なる“楽になった”ではありません。
私にとっては、時間ができた分、受診者の説明やフォロー設計により丁寧に向き合えるようになった、という意味が大きいです。
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