論文を届けるだけでは足りなくなった|MSLからヘルステックの医療戦略へ移った35歳医師の転職

今回ご紹介するのは、製薬企業でMSL(メディカルサイエンスリエゾン)として働いていた35歳医師が、ヘルステック企業の医療戦略職へ転職した事例です。
臨床から企業へ移った後、さらに別の企業へ移る選択は一見遠回りに見えるかもしれません。ですが本人は一貫して、「医療の質が上がる仕組みに関わる」という軸を持ち続けていました。MSLで学術と現場を繋いだ後、次は“伝える”から“実装する”へ重心を移した転職です。

人物プロフィール

年齢:35歳
性別:男性
転職前:製薬企業/メディカルアフェアーズ(MSL)
転職後:ヘルステック企業/Medical Strategy(医療戦略・臨床企画)
転職前年収:1,550万円(固定+賞与想定)
転職後年収:1,650万円(固定+賞与想定)
転職動機・テーマ:治エビデンスを届けるだけでなく、医療現場で“使われる形”に実装し、継続的に改善できる側に回りたかったため。MSLからヘルステックへ。学術を伝える側から、医療を設計・実装する側へ移った転身。

ざっくりまとめると

・私はMSLとして、医療者との学術対話を通じて、適正使用や情報のズレを減らす活動に携わってきました。

・ただ、経験を積むほどに「正しく伝わる」だけでは、現場の運用は変わり切らないと感じるようになりました。

・転職の軸は、プロダクトを売ることではなく、医療の運用を“仕組みとして変える”ことでした。

・ヘルステックでは、ガイドライン・現場オペレーション・UI/UX・データの回収まで含めて改善できる点に魅力を感じました。

転職前のキャリアと悩み

MSLとしての仕事は、想像以上に“現場のリアル”に触れるものでした。
KOLや専門医の先生方と学術的な対話をしながら、治療選択の背景にある不安や、施設ごとの運用の違いを知ります。
論文の読み方やガイドラインの解釈が、現場でどうズレるかも分かります。

私自身、この仕事に手応えがありました。
臨床医の時とは違う形で、医療に効いている感覚もありました。
ただ、時間が経つほどに、別の限界も見えてきました。

それは、情報が正しく伝わっても、現場の運用が変わるとは限らないということです。
現場には、忙しさや人手不足、院内ルール、既存の業務フローがあり、正しい情報だけでは動かない場面があります。
先生方の理解が進んでいても、「やりたいが、回らない」という状態は珍しくありません。

私はそこで、少しずつ思うようになりました。
医療を変えるには、学術だけでなく“実装”が必要だ、と。

転職を意識したきっかけ

転職を意識したのは、ある医療現場で「説明は分かったが、運用は無理だ」と言われたことがきっかけです。
話している内容は正しい。必要性も理解されている。
それでも、現場のフローに落ちない。

その時に気づきました。
私は、伝えることには強くなった。
ただ、現場の運用そのものを変える権限や手段は持っていない。
このギャップが、強く残りました。

ヘルステックのプロダクトを見ていると、医療を変える手段が「情報」だけではなく、

・ワークフロー
・UI/UX
・データ回収とフィードバック
・継続運用の設計

にあることが分かります。
私は、そこに医師として関わる方が、現場に届くと思うようになりました。

転職活動内容

転職活動では、ヘルステックの中でも「医療戦略がどこまで意思決定に入っているか」を重視しました。
見栄えの良いプロダクトでも、医療の解像度が低いと、現場で詰まります。

私が見ていたポイントは次の通りです。

・医療戦略がプロダクト設計の上流にいるか
・臨床的妥当性と事業性を両立させる議論ができるか
・医療者のインサイトが、仕様に反映される構造があるか
・ローンチ後に、データで改善が回る設計になっているか
・規制やガイドラインへの向き合い方が誠実か

面接では、「なぜ製薬を離れるのか」も聞かれました。
私は、製薬の価値を否定しません。
ただ、私が次にやりたいのは、情報を届けることではなく、医療の運用を作ることだと伝えました。

意思決定のポイント/自分の市場価値

転職を決める時、私が見ていたのは3つです。

一つ目は、医療戦略が“レビュー役”で終わらないことです。
承認のための医師ではなく、プロダクトを前に進める医師であることを重視しました。

二つ目は、現場の運用まで責任を持てることです。
プロダクトは作って終わりではなく、使われ続ける形にしないと意味がありません。
現場の業務フローに落ちる設計まで関われるかを重視しました。

三つ目は、改善が回ることです。
ローンチ後にデータを見て改善できる構造があるか。
ここがないと、理想論で終わります。

自分の市場価値は、「学術に詳しい医師」ではなく、
現場の疑問を構造化し、医療の妥当性を保ったまま、プロダクトとして実装できる人だと整理しました。

内定・転職後の変化

転職後にまず感じたのは、意思決定の速度の違いです。
製薬は慎重で、時間軸は長い。
ヘルステックは早く、試して直す前提です。

このスピード感は最初は戸惑いました。
ただ、医療の妥当性を守りながら、プロダクトを前に進める役割は、やりがいが大きいです。
「正しい情報を伝える」だけではなく、「正しい形で使われる」まで持っていける。
そこに、MSL時代にはなかった手触りがあります。

メッセージと総括

この転職は、製薬を否定したものではありません。
MSLとして学術と現場の距離を縮めた経験があったからこそ、「実装がないと変わらない」という現実を理解できました。

医療は、正しいだけでは動かない。
運用に落ちて、続いて、改善されて初めて変わります。
私はその領域に、医師として責任を持ちたかったのです。

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